築25年を迎えた賃貸マンションにおいて、屋上からの雨漏りを契機に、外壁や屋上の劣化状況が明らかとなり、大規模修繕工事を実施いたしました。
今回は、不動産管理会社様からのご紹介でオーナー様とご縁をいただき、建物全体の調査・診断から施工までを担当させていただきました。
本記事では、施工の目的、工事の流れ、安全性確保のポイントを、管理会社様・オーナー様・管理組合様それぞれの立場から参考にしていただけるように構成しています。
工事の背景と調査結果
屋上の雨漏りをきっかけに建物診断を実施したところ、以下のような劣化が確認されました。
- 外壁:チョーキング、コンクリート爆裂、ひび割れ
- シーリング:硬化・剥離・破断
- 屋上:防水層の劣化と雨水浸入
これらの劣化症状は、建物の防水性能や安全性、資産価値に大きく関わるため、長期的視点からの大規模修繕が必要と判断しました。


実施した主な工事項目と目的
工事内容 | 主な目的・効果 |
---|---|
外壁塗装工事 | 美観回復・防水性能向上 |
屋上防水工事 | 雨漏り防止・耐久性強化・防水性能向上 |
鉄部塗装工事 | 防錆・美観維持 |
シーリング打ち替え | 防水機能回復・長寿命化 |
爆裂補修工事 | 構造保護・剥落リスク低減 |
階段塗床防水 | 防滑性と防水性の向上 |
受水槽塗装 | 耐久性維持と保護 |
工事概要
所在地 | 大分市内 |
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築年数 | 約25年 |
工期 | 約3ヶ月(2025年1月下旬~4月) |
作業人数 | 平均3~6名(天候により変動あり) |
各工程の詳細と施工写真
仮設足場組立
安全な作業環境を確保するため、建物全体を囲う足場を設置し、飛散防止シートで養生を行いました。


高圧洗浄
劣化塗膜、ホコリ、藻などを丁寧に洗浄。下地の密着性を高めるための重要な工程です。



下地補修
ひび割れ補修

外壁に生じたひび割れは、雨水が建物内部に浸入する入口となり、鉄筋の腐食を進行させる原因になります。
そのため、ご入居されている皆様の安心と、建物の耐久性・資産価値を守るうえでも、ひび割れは早期に適切な補修を行うことが重要です。





爆裂補修
今回の補修では、脆弱な部分を撤去し、鉄筋の防錆処理を施した上でモルタルを充填し、再発防止を徹底しました。
これにより、建物の耐久性を高め、安全性を確保する大切な工程となっています。
下の写真は、同じ爆裂箇所の「施工前」と「撤去後」の比較です。




「鉄筋の腐食部分を丁寧に削り落とし、再発防止を図る作業」




シーリング工事
既存の劣化シーリングを撤去し、新規に打ち替えまたは打ち増しを実施。防水性能を回復。
マンションの大規模改修工事では、外壁や屋上の改修と並んで、目地やサッシ周りの「シーリング(コーキング)」のメンテナンスも非常に重要な工程です。
シーリング材は建物の隙間から雨水の侵入を防ぎ、構造部材の動きに追従して耐久性を維持する役割を担っています。
しかし、長年の紫外線や気温差、経年劣化により、硬化・ひび割れ・剥離などが発生し、防水性が低下していました。
今回のマンション改修工事においては、こうした劣化状態を確認のうえ、シーリング打ち替え工事を実施いたしました。




シーリングの劣化は外壁や屋上と同様に建物の資産価値や耐久性に大きく影響します。
定期的なメンテナンスとタイミングの良い改修が、長期的に安心して建物を維持するための大切なポイントとなります。
外壁塗装(下塗り・中塗り・上塗り)
今回の大規模修繕工事においては、外壁全体の塗装工事も重要な工程のひとつとして実施いたしました。
外壁塗装は、建物の美観回復だけでなく、防水性能や耐久性の向上に大きく寄与する工事です。
経年による汚れや塗膜の劣化をリセットし、外壁を雨水や紫外線からしっかりと保護することを目的としています。
塗装工事は、下地処理を十分に行ったうえで、下塗り・中塗り・上塗りの3工程により施工を行いました。
下地処理と下塗り工程
塗装作業の前には、高圧洗浄による汚れや劣化塗膜の除去、およびひび割れや爆裂箇所の補修を実施。
これにより塗装面のコンディションを整え、塗膜の密着性を高めます。
下塗りでは、素地と上塗り塗料との密着性向上を目的とし、弾性性能を有する下塗り材(エスケー弾性プレミアムフィラー)を採用しました。
これにより、ひび割れ追従性や防水性の向上を図るとともに、塗膜全体の耐久性を強化しています。



中塗り・上塗り工程
塗装本来の機能を最大限に発揮させるため、中塗り・上塗りの2工程を慎重に行いました。
中塗りでは、塗膜の厚みと均一性を確保し、塗装面の耐候性・美観の基礎を形成。
上塗りには、耐候性・低汚染性・防カビ性に優れた高性能塗料(エスケー化研 プレミアムシリコン)を使用し、建物外観の美しさと長期的な保護性能を実現しました。



仕上げの上塗りは、色ムラが出ないよう丁寧なローラー施工を行い、均一で美しい塗膜面に仕上げています。



取り外し可能な部品の対応



塗装時には、通路側の手すり・エアコンホースカバーなど、取り外しが可能な部材は極力取り外して施工を実施。
これは、将来的な部材交換時に未塗装部分が露出してしまうリスクを防ぐための重要な配慮です。
外観の美しさを長く保つことを見据え、見えない箇所までしっかりと塗装施工を行うことを心がけています。
こうした細部へのこだわりも、建物全体の価値を維持するうえで欠かせない取り組みと考えております。
タイル外壁打診調査と注入工事
今回の大規模修繕工事では、外壁の一部に使用されているタイル面について、タイル浮き・剥離の有無を確認するための詳細な調査を行いました。
タイル仕上げの外壁は美観性・耐久性に優れる一方で、経年による接着力の低下やコンクリートの劣化によって、タイルが浮いたり剥がれたりするリスクが伴います。
こうした浮き・剥離は、外壁の安全性を損ね、タイル落下事故につながる恐れもあるため、的確な診断と早期対応が重要となります。
打診調査の実施
タイル面の調査には、打診棒を用いた打診検査を採用しました。
打診棒をタイル表面に軽く当てながら音の変化を確認し、内部の空洞化や接着不良の有無を判別していきます。
正常な箇所は硬質で響きのある音が返る一方、浮きや剥離のある箇所では鈍く低い音が確認されます。
こうした音の違いから、目視では確認が難しいタイル内部の状況を把握することが可能です。
今回の調査においても、一部にタイル浮きが確認されました。
補修方法と施工内容
調査結果を踏まえ、浮きが確認された箇所には、エポキシ樹脂注入工法を用いて補修を実施いたしました。
補修の流れ






施工後の効果と意義
注入工法により、タイルの接着力が回復し、浮き・剥落リスクが大きく低減されました。
また、既存のタイルを残したまま施工可能なため、外観デザインを損なうことなく安全性を向上させることができました。
タイル仕上げの外壁は、目視だけでは劣化の進行を把握することが難しく、高所の打診調査には足場の設置が欠かせません。
そのため、大規模修繕工事の機会を活用し、確実な調査と適切な補修を実施することが重要です。
建物の安全性と資産価値を長期にわたり維持するためにも、計画的な対応が求められます。
今後も、資産価値と入居者様の安全確保の両立を意識した改修工事を行ってまいります。
屋上防水工事
屋上は建物の中でも雨風や紫外線の影響を強く受ける箇所であり、防水層の劣化が進行しやすい部位です。
防水性能が低下すると、雨漏りや内部構造への水分浸入が発生し、建物全体の耐久性や資産価値に大きな影響を及ぼします。
今回の建物でも、既に雨漏りが確認されていたことから、屋上防水工事は重要な改修項目として実施いたしました。
現状確認と施工方針
調査の結果、既存の防水層には複数の劣化や破損箇所が見られ、一部では素地が露出している状態でした。
このため、劣化が著しい箇所については撤去・補修を行ったうえで、屋上全体にウレタン防水を施工しています。
防水層の形成にあたっては、下地処理を丁寧に行うことが施工品質に直結するため、各工程を慎重に進めました。
施工の流れ
屋上防水工事は以下の工程にて実施しました:
- 既存防水層の撤去(必要箇所)
劣化や損傷が著しい部分は既存の防水層を撤去し、下地の状態を確認。 - 下地処理(ケレン・清掃・調整)
施工面全体を整え、付着物や汚れを除去。 - プライマー塗布
防水材の接着性を高めるため、プライマーを塗布。 - 防水材の塗布
ウレタン防水材を規定の塗膜厚で塗布し、防水層を形成。 - トップコート塗布
耐候性向上・防水層の保護を目的に、トップコートを仕上げ塗布。
施工後の効果
今回の防水工事により、屋上全体の防水性能が確実に回復。
雨漏りリスクを解消するとともに、建物の耐久性と資産価値維持に貢献する施工となりました。
今後も、細部まで丁寧な施工と品質管理を徹底し、安心してご使用いただける建物環境の維持に努めてまいります。
防水工事では、下地処理を丁寧に行い、施工面の状態に合わせて防水材を均一に塗り広げることが非常に重要です。
今回の工事では、ウレタン防水工法を採用し、長期間にわたって雨水の侵入を防ぐ防水層を確保しました。















完成写真(施工前後の比較)
























大規模修繕による効果とオーナー様・管理会社様からの評価
今回実施した大規模修繕工事により、外壁や屋上の防水性能が大きく回復し、建物全体の耐久性が向上しました。
また、外観の美観向上も達成できたことで、ご入居者様からは、
「建物がきれいになって嬉しい」
「こんなに丁寧な業者さんは初めて」
といった大変嬉しいお声を頂戴しました。
こうした反響は、入居率の向上や建物管理のしやすさにも良い影響を与えていると感じております。
工事期間中は、オーナー様・管理会社様へ進捗状況や作業内容をこまめにご報告し、円滑なコミュニケーションを大切にしました。
オーナー様からは、
「丁寧な対応で安心して工事を任せられた」
「工事の進め方や状況をしっかり共有してもらえて良かった」
といった評価もいただき、信頼関係の構築につながる工事となりました。
また、当社では工事期間中のご入居者様への配慮を特に大切にしています。
オーナー様や管理会社様が、ご入居者様から信頼を得られるようサポートすることが私たちの大切な役割であり、
この姿勢は今までも、そしてこれからも変わることはありません。
「縁の下の力持ち」として、建物を守り、皆さまが安心できる環境づくりを陰ながら支えていくこと。
それが私たちの仕事への誇りであり、今後も変わらぬ信念として取り組んでまいります。
資産価値維持の重要性と定期的な修繕の必要性
マンションは年月の経過とともに、外壁のひび割れやシーリングの劣化、屋上防水層の傷みなど、少しずつ劣化が進行していきます。
表面的な見た目だけでなく、雨水の侵入や鉄筋の腐食といった内部のダメージにつながる恐れもあり、放置してしまうと建物全体の安全性や資産価値に深刻な影響を及ぼします。
特に、外壁の爆裂や剥落は通行人やご入居者様の安全を脅かす重大なリスクをはらんでおり、事故発生時には社会的な信用にも関わる問題となりかねません。
また、建物の劣化は住環境の快適性や入居率の維持にも直結します。
外観が傷んだままでは安心して暮らせず、結果として入居率の低下や家賃下落といった経営上のリスクにもつながる可能性があります。
だからこそ、計画的な大規模修繕工事の実施が不可欠です。
外壁や屋上の防水性能、美観を維持することで、マンションの長期的な資産価値を守ることができます。
さらに、資産価値を守る上で重要なのは、「見えない部分の劣化」に早く気づくことです。
外観は一見問題なさそうでも、外壁内部や防水層、鉄部など目に見えない箇所で劣化が進行しているケースは少なくありません。
そのため、定期的な建物診断と適切な修繕計画の策定を継続的に行うことが、建物を長持ちさせ、資産価値を守る最善の方法であると私たちは考えています。
まとめ|マンションの資産価値を守るために大規模修繕は欠かせません
マンションの寿命を延ばし、資産価値を維持・向上させるためには、計画的な大規模修繕工事が欠かせません。
外壁や屋上の防水性能を確実に回復し、美観を維持することは、入居率の向上や管理のしやすさにも直結し、
なによりご入居者様の安心・安全な暮らしを守ることにつながります。
「うちのマンションもそろそろ修繕の時期かもしれない」
「どのタイミングで進めるべきか分からない」
とお考えのオーナー様・管理会社様は、どうぞお気軽にご相談ください。
大規模修繕の必要性や最適なタイミング、費用の目安など、わかりやすく丁寧にご案内いたします。
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